ロジュノフ

予定よりも時間をくってしまったので次の訪問地であるロジュノフという大自然公園に向かう。田舎道はでこぼこしているが交通信号もないしまわりの景色は色とりどりの花が咲いて牧歌的だった。ケシの花が多い。ミニバスが進む方向にはベスキディー山系がうっすらと現れた。

ベスキディー山系のラドポシュト山はいにしえから神聖なる山であった。古代は多神教の地であったがその山にはラデガスト神の像が建っている。ラデガストは羊を守る神であったと伝えられている。神聖なるラドポシュト山の麓にロジュノフはある。
いまのルーマニア地方からバラヒア族がロジュノフに移住した。15世紀の頃だった。チェコランドはいまだ銀の採掘で豊かではあったが,絢爛豪華なプラハ文化を花開かせた神聖ローマ皇帝カレル4世はすでにこの世にはいない。初めての恐ろしいペストの流行で都市はどこも大混乱に陥っていた。その上、カトリック教の専横にたいして宗教的な戦争勃発の兆しが見え隠れしていた。それでも、大森林に覆われた山系の麓には羊飼いが住みやすくて牧歌的な地をえらんで移住、定住した。

 このロジュノフは社会主義時代に野外の博物館として開発された観光の地。むかしの木造建築の家屋・村役場・教会をこの地に移設または昔の通りに復元し,この地方の花模様で飾り付けしたワインセラーをつくり展示している。この野外博物館を開発したとうじの宗教にこだわらない時代を反映して,たかく聳える木造の教会はカトリック式でもないし東方正教のシンボルもなければ,ことさら原始ラデガスト神を祀るようにはなっていない。
むかしの生活をおおらかに見学させるためのリクリエーション目的のスカンゼンである。スカンゼンとは野外博物館と訳されるが日本的には民俗博物館に相当する。このロジュノフでは昔の農民が暮らした生活様式を見学できるように民俗的建物がよく整備された大自然のなかに点在している。