「シュムシュ島に上陸する日」

ロシアの漁船

朝は珍しく快晴だった。朝日を写真に収める。

8時の予定は1時間程度遅れて出発、艀でシュムシュ島の片岡港に到着。気持ちが高ぶる。
船が近くに移動していたので艀は15分で岸壁に横付けした。
港と言っても岸壁があるだけで本当は港とは呼べないところだろう。
占守島に上陸するとすぐに放りっぱなしの戦車のキャタピラが目に入る。風雪の為に錆付いている。
島に上がったとたん、この地は60年前までは戦場だったことが理解できる瞬間だった。
言葉がでない。何という粗野な地だろう。
 
そこから早速トラック改造のバスに入る。
6輪駆動車が走り出すとすぐに片岡飛行場跡だ。むかし日本軍が整備した広大な滑走路を走る。
コンクリートはしっかりしている。

道なき道というほどでもないが殆ど交通量がないだろと分かる草がタイヤで踏み固められた道をトラック改造のバスは大きく揺れながらゆっくりと進む。

バスはぎゅう詰めで暑くなったが途中で休む事になった。
そこはきれいな小川が流れていて見晴らしのよい平原。小川には鮭が上ってくるそうだ。
密漁を監視する役人の粗末な小屋があって数人が詰めている。近寄っていくと招き寄せられてウォッカをご馳走になった。

かわった花が少し咲いている。こんな地にでも花は咲く。
見渡すと高原の湿地帯という感じの荒涼とした景色がどこまでも続く。これが9月の景色なのか...

そこから少しバスが走ると川を渡る段になって皆バスから降りる。
崩れかけた橋が目の前に横たわっている。バスは落下の可能性があり危ないからバスは小川の狭いところを6輪駆動で渡ろうとした。
川は水深10センチ程度だが道はなくて急勾配の向こう岸ではタイヤが土に食いつかないので結局バスが川を渡ることは不可能だった。
それで危険を冒してバスは橋を渡った... 無事に渡りきった時,みなほっと胸をなで下ろした。
ロシア人で、どうだ、大したものだろうと態度で示す男がいて失笑をかっていた。
が、われわれは一体ほんとうに目的地にたどり着けるのだろうかと内心不安になった。