6月16日その2

*聖なるコペチェックの丘
オロモウツバス停留所から20分ぐらいで終点コペチェック動物園に着くが、そのひとつ手前のコペチェック・バジリカというのが聖コペチェック教会に近いと確認してからバスに乗り込んだ。

鉄道レールの下をくぐりしばらく走ると右に折れて広い畑の中にでる。ここにきてオロモウツは平野だと気づく。バスの中ではできるなら前のほうに席をとるのがよい。左右に広大な畑を見るが、そのバスが向かう遠くの正面の丘の上に勇壮な建物が見える。それが聖コペチェック教会だ。その眺めはひじょうに美しいから写真を一枚写したいと思うが、自動車で走るときも道路が狭くて写真撮影のために停車することができない。目に焼き付けるのがいい。太陽が降り注ぐとき菜の花が一面に咲いていれば、丘の頂に堂々と勇士を現す教会を背後にキラキラと輝く平野はすこぶる幻想的だ。

コペチェックの大教会は丘の上にある。ピンカーブの狭い道をバスは駆け上る。下にモラヴィア平原を見渡しながらバスは走り私たちは車窓に釘付けになる。丘の斜面には多くの家屋が建築されている人気の新興住宅地だ。

左に小さい礼拝堂が現れる。巡礼の時分には華やかなハナーの伝統衣装で着飾った男女が憩い記念撮影する場所でもある。その辺りから上に眺める聖コペチェック教会が一番美しいと言われている。その後バスの窓から左側に大おおきなコペチェック教会が現れるから次にとまるバス停で降りる。

そこから教会の尖塔を目指して丘を登るとすぐにお土産屋さんの並ぶ20メートル程度の通りにでる。そこがメインストリートだ。週末は大勢の人が賑やかに遊んだりちかくの動物園まで散策する。メインストリートから眺める教会の尖塔は迫ってくる感じの美しさがある。5コルナで小さなコペチェック・アイスクリームを求めて喉を冷やしてからもう一度迫力あるコペチェック大教会の尖塔に視線を向けた。

門のような構えをくぐると下に傾斜した広場が広がる。その先は森林で遙かかなたには平原が見えて,そのまた遙か前方にはオロモウツ市の全景が手にとるように見えてしまう。右を向くと大教会の正面玄関が見える。17世紀半葉にウイーンの設計者の指導のもと建築された大教会はバロックそのもの、建物のいただきには司教や聖人の像がならんでいる。内部はもっと絢爛豪華な像や壁絵で埋め尽くされ、金色に輝く聖壇が光を発している。すべての装飾が金色に輝き見学する者を圧倒せずにはいない。

宗教戦争に明け暮れたチェコにあってもオロモウツは一貫してカトリックで通した。それがこの古都の歴史的事実であって、それを理解していないとオロモウツの値打ちが分かりにくい。宗教改革の情熱に燃えてやく15年間も勇敢に戦ったフス派をやっと押さえつけたローマ・カトリック教がチェコ領で強引に再カトリック化を進めていた頃に建設されたバロック教会なのである。カトリックの威厳を誇示するために装飾過多になったのだが,いぜんの権力横暴を反省して設立されたイエズス会カトリック教の世界布教に命をかけた時代でもある。理不尽ではあるが風土に根ざした理由からヨーロッパ各地で魔女狩りが横行していた時代とも重なる。