6月20日その1

 手配のミニバスで出発した。目的はふたつで,世界文化遺産のレドニツェのツアーと洞窟のワインセラーでワインと食事をすること。


 オロモウツを出発して国道を20分も南下すると、見晴らしのよいなだらかな丘が目にさわやかだ。広々とした緑色の平原のなかにちいさな村が散らばっている。運転手に頼んで、三帝会戦の古戦場跡の見学場所に向かってハンドルをきってもらう。


*三帝会戦跡スラフコフ
 1805年オーストリア帝国ロシア帝国が同盟を結びナポレオン帝国大部隊の進行を食い止めるべく決戦を交えた古戦場が、スラフコフ(ドイツ名アウステルリッツ)であった。フランス国軍はよく訓練されていたしナポレオンは大砲の使い方と敵方包囲の戦術に長けていた。同盟軍はいともたやすく敗退した。
ナポレオンはこの大勝を機にいわゆるナポレオン戦争をヨーロッパ中に拡大していった。しかしチェコにとっては不幸なことに、宗主国オーストリアの締め付けがふたたび始まるのだった。フランス革命がもたらした自由思想の影響を閉じ込めるために採った帝国の再びの締めつけは、チェコ人のあわい希望「独立」をまたもや奪ってしまったのである。


 絵画に描かれて有名なナポレオンが望遠鏡で敵陣地と戦況を眺めているシーンも、ここでも見られたであろう。その場所にある記念碑を前景にし、美しく広がるモラヴィア平原を後景にして写真を撮った。


 スラフコフにはナポレオンが戦勝後しばらく滞在した素晴らしいお城があって観光客が見逃さないスポットになっている。また近くにホテルがありそのレストランは中世のお城を復元して古めかしい雰囲気を醸しだし、サービスするお嬢さんは雰囲気に合う衣装を着ている。そしてナポレオンゆかりの絵画がたくさん飾ってありさすがに三帝会戦をうりにしていると感心する。


 ミニバスは幹線道を外れて片田舎の小道をはいる。南下したから温度が2度ほど上がっているが空調がよくきいて車内は快適で、わがご婦人方の楽しげな会話が弾む。南モラヴィアはワインの産地で、ブドウ畑が広がっている。ワインの生産量でチェコ第二位の工場を通り過ぎる。その村はとても豊かそうだ。一軒家が多くそれぞれの家屋には駐車場がある。ワイン作りにはげむ家庭も多いそうだ。